テスラはなぜLFPバッテリーに100%充電を推奨するのか
テスラはLFPバッテリー搭載車に対して、100%充電を推奨しています。これは従来のニッケル系バッテリーとは異なる運用方針であり、EVユーザーにとっては「安心して満充電できる」という新しい設計思想です。
- LFPは構造的に安定:高温耐性・過充電耐性が高く、満充電でも安全性が保たれる
- BMSキャリブレーションのため:テスラは「月1回は100%充電を」と案内しており、SOC(State of Charge)精度の維持が目的
- ユーザーの不安解消:航続距離を最大化することで「EVは不安」という印象を払拭したい設計意図
→ つまり、運用上の利便性と制御精度のために100%充電が推奨されている。
モデル3で100%充電を続けた結果、劣化は起きた
私のモデル3(2021年式)では、推奨通りの100%充電運用を続けた結果、約10%の劣化が発生しました。
- 運用期間:4年3ヶ月
- 走行距離:50,000km
- 充電習慣:週に1回以上100%充電(深夜電力、太陽光発電中心)
- 劣化率:約10%(航続距離420km → 378km)
→ 推奨通りの運用でも、構造的な劣化は避けられなかった。
LFPでも80%充電運用で劣化を抑えられるのか?
omickey氏のモデル3記録(参考リンク)
テスラ モデル3ハイランド <バッテリーレポート>1万キロ走行
- 車種:モデル3 RWD(LFP搭載)
- 運用期間:約2年(記録は10,000km時点)
- 充電習慣:80〜85%充電中心、40%を下回ったら充電
- 劣化率:約2%(437km → 428km)
- 記録方法:TeslaFiによる記録とグラフ分析
- 補足:満充電は避ける方針だが、95〜100%充電も意外と多かったと自己分析あり
ojitesuのモデル3記録との比較
オーナー | 車種 | 運用年数 | 充電習慣 | 劣化率 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
ojitesu | モデル3 RWD | 4年3ヶ月 | ほぼ毎回100%充電 | 約10% | 深夜電力、太陽光発電中心 |
omickey氏 | モデル3 RWD | 約2年 | 80〜85%充電中心 | 約2% | TeslaFi記録あり |
omickey氏のモデル3は2024年式のハイランド、ojitesuは2021年式なので、正確な比較はできません。
バッテリーはどちらもLFPなので、比較対象にさせていただきました。
充電上限と劣化率の関係を構造的に考察する
- 充電上限の違いが劣化率に影響している可能性はあるが、使用環境・走行距離・充電頻度などの変数が多く、単純比較はできない
- ただし、「推奨通りでも劣化する」「制限すれば抑えられる可能性がある」という構造的傾向は見えてくる
EV運用は「推奨=正解」ではない

テスラの推奨は「安全性と制御精度のための設計思想」であり、劣化を完全に防ぐものではない。 むしろ、充電上限を抑えることで、構造的なストレスを減らす可能性があるという記録が複数存在する。
EV運用においては、「推奨=正解」ではなく、記録と構造に基づいた判断設計が必要です。
次回:EV航続距離は“90%の世界”で設計せよ
次の記事では、劣化を前提にしたEV運用設計──「新車時の90%を実用距離と見なす」考え方を紹介します。 実家往復400kmの設計例をもとに、後悔しないEV運用の判断フレームを構造的に提示します。
→ [EV航続距離は“90%の世界”で設計せよ|実家往復400kmの最適解(近日公開)]
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