私は2021年にLFP搭載のモデル3を購入し、テスラの推奨する、週に1回の100%充電で運用してきました。その記録を公開します。
はじめに:LFPは劣化しにくいという通説
テスラのモデル3に搭載されているLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーは、「劣化しにくい」「100%充電しても問題ない」と言われています。ニッケル系バッテリーでは避けられていた満充電が、LFPではむしろ推奨される──これはEV運用における大きな転換です。
私も過去にそのように考えていました。
※補足:テスラ車のバッテリーには主に2種類あります。
LFP(リン酸鉄リチウム):モデル3 SR+(2021年以降)およびモデルY RWD(2022年以降の一部地域)に搭載。100%充電が推奨されています。
ニッケル系(NCA/NCM):モデルS・X・パフォーマンス系・一部のモデル3/Yに搭載。通常は80〜90%充電が推奨されます。
本記事は、LFP搭載のモデル3(2021年式)における記録です。ニッケル系バッテリーには当てはまりませんのでご注意ください。
テスラの推奨するLFPの充電管理
テスラはLFP電池を搭載している車は、週に1回100%まで充電することを推奨しています。
しかし、実際に100%充電を続けた場合、本当に劣化しないのでしょうか? 私は2021年にLFP搭載のモデル3を購入し、以降4年3ヶ月にわたり、基本的に100%充電で運用してきました。その記録を公開します。
実測データ:100%充電運用の4年後
走行距離:50,000km
充電習慣:ほぼ毎回100%充電(深夜電力中心)
使用環境:兵庫県神戸市(温暖な気候)
記録方法:TeslaFiによるログ取得、航続距離の推移を定期記録
📉 劣化率の推移


納車時の航続距離(100%充電時):約420km
現在の航続距離(100%充電時):約378km
→ 劣化率:約10%
この数値は、LFPバッテリーでも劣化が起こることを示しています。推奨通りの運用であっても、構造的な変化は避けられない可能性があります。
5,000キロ経過時
2万キロ経過時
3万5千キロ経過時
技術者の見解との照合:不極材が同じなら、劣化メカニズムも同じ
電池メーカーの知人によれば、LFPでも不極材(アノード)はニッケル系と同じくグラファイトが使われており、リチウムの出入りによる膨張収縮やSEI形成といった劣化メカニズムは本質的に変わらないとのこと。
つまり、LFPの「劣化しにくさ」は構造的安定性に起因するが、充電上限運用によるアノード側のストレスは依然として存在する。この視点から見れば、私の100%充電運用による10%劣化は、技術的仮説を裏付ける実例とも言えるかもしれません。
次回予告:推奨運用の検証と他者比較へ
この記録は、LFPバッテリーの100%充電運用における実測データとして残します。 次回の記事では、テスラの「100%充電推奨」という設計思想と、今回の記録とのギャップについて構造的に検証します。さらに、80%運用を続けている他オーナーの記録とも比較し、運用方法による劣化率の違いを探ります。
→ [テスラは100%充電を推奨するが…構造的に見た“限界”とは(近日公開)]
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